くるおしい・・・集束する恋慕
「ガイは本当に音機関が好きね」
そう言ってふわりと微笑む彼女を見て、急激に血が顔に上るのがわかる。
確実に赤くなっているだろうから、俺は「まぁね」と言いながら慌てて顔を伏せた。
俺が今、いじっているのは作りかけのオルゴール。
この間シェリダンへ行った時にあのオルゴールの仕組みを教わり、
試験的にだが自分で作ってみることにしたのだ。
音機関をいじるという行為自体、俺にとっては楽しくて仕方ないのだが、
「綺麗な音色ね」とシェリダンでオルゴールを聴いた時に見せた、彼女の笑顔。
それをもう一度見たくて作り始めたという、邪な理由が、今回は付いている。
自分の楽しみだけではなく、彼女の笑顔のために音機関をいじるというのも、悪くはない。
傍らで、彼女がじっと俺の作業を見ている。
柄にもなく緊張して、少しだけ手が不器用になる。
上手く作ってやりたいのだが、これだけはどうしようもない。
だからその代わりに、俺は指先に想いを込める。
指先に集束する恋慕。
不細工な分だけ、想いが伝わればいい。そう思いながら。
このオルゴールを聴く度に、彼女が笑顔になればいい。そう思いながら。
出来上がったオルゴールを差し出した時の彼女を思い浮かべて、俺は思わず笑みを漏らした。
end
お題はas far as I know 様よりお借りしました。
2006.8. ありさか
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