おしい・・・類似品を知っている




自分に良く似た人間を知っている。
彼女が自分に寄せる想いと似たものを知っている。


彼女に触れる度に考える。
自分に良く似た人間を知っているのではなくて、
本当は自分が良く似た人間を知っているのかもしれないと。
彼女が自分に寄せる想いと似たものを知っているのではなくて、
彼女が自分に寄せる想いが似たものを知っているのかもしれないと。
彼女の指先に自分のそれを絡める度、考える。


彼女の微笑みが、安らぐはずの微笑みが、余計に不安を掻き立てた。


もしかしたら、今ここにいる彼女も、彼女の類似品なのかもしれなかった。
ぬくもりも、海を彷彿とさせる青い目も、自分を呼ぶ美しい声も全部、類似品なのかもしれなかった。


所詮、自分には類似品しか与えられないのか。


「アッシュ?」


青い目が自分を映す。これもきっと、ガラス玉。
ぎゅっと肩を掴む。これもきっと、類似品。


「なぁ、本物はどこだ?」


本物ならきっと、お前は俺を類似品ではない想いで愛してくれるだろう。












end


お題はas far as I know 様よりお借りしました。


2006.8. ありさか