「アリエッタは、シンクよりお姉さん、です」
「何なのさ急に」
目の前の少女はどこか嬉しそうに言う。
対照的に、シンクは机に頬杖をついたまま、それが何だとでも言いたげな表情をする。
「アリエッタはシンクよりお姉さんだから、シンクはアリエッタの言うことを聞く、です」
シンクはその言葉を鼻で笑い飛ばす。
きっと、何か頼みごとがあって、それを彼に了承させるためにそのようなことを言い出したのだろう。
年齢的には確かに彼女の方が年上だが、精神的には自分の方が遥かに上だ、とシンクは思っている。
そのようなことを言って聞かせてみたものの、アリエッタは聞く耳を持たない。
「年上は敬え、です」
いつも泣いている彼女が実は、とても頑固者で意志の強い人間だということを彼は知っている。
つまり、一度言い出したら聞かない、と。
「わかったよ。それで、ボクに何をして欲しいわけ?」
観念し、先回りして聞いてやる。
するとアリエッタは嬉しそうに笑い、「アリエッタ、ぎゅってして欲しい、です」と言ったものだから彼の仮面に隠されている部分が真っ赤になった。
仮面しててよかった、と思ったのも束の間で、「シンク、耳、赤いです」と彼女に指摘されてしまい、彼は慌てふためく羽目になったのであった。
end
ただ単にアリエッタに「私お姉さんなのよ」的なことを言わせたいだけだったというシロモノでした。
2006.8. ありさか
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